スペイン・アストゥリアス州の血統を受け継いだクエルボ・イ・ソブリノス
「スイスのハートにキューバのスピリット」と表現されるラグジュアリーウォッチブランドのクエルボ・イ・ソブリノス。
ハバナの地で創業してから100年以上の歴史を持ち、多くの偉人に愛されてきました。そんなブランドの創業者ラモン・フェルナンデス・クエルボの故郷はキューバではなく、スペインのアストゥリアス州だということはあまり知られていません。
ここでは、スペインのアストゥリアス州にルーツを持ち、キューバのハバナという地で生み出されたクエルボ・イ・ソブリノスの魅力に迫ります。
クエルボ・イ・ソブリノス創業者の故郷スペイン・アストゥリアス州
クエルボ・イ・ソブリノス創業者ラモン・フェルナンデス・クエルボの故郷アストゥリアス州は、スペイン北西部のカンタブリアン海沿岸に位置した自治州です。
8世紀初頭、当時支配力の強かったイスラム勢力に征服されるも、718年にコバドンガの戦いにより勝利を治めました。これを機に現在のアストゥリアス州にかつてアストゥリアス王国を建国したのです。
やがてアストゥリアス王国はレオン王国、カスティーリャ王国と移り変わりました。1388年にカスティーリャ王ファン1世が王子にアストゥリアス公という称号を与えますが、この称号は現在のスペイン王族でもあるレオノール王女まで継承されています。
つまりスペインはアストゥリアス王国から始まったと言っても過言ではないでしょう。
世界遺産に登録されているオビエドとアストゥリアス王国の建造物群や、サンタクエバデコバドンガ(コドバンガの聖母の聖なる洞窟)の崖に建設された小さな聖堂はキリストの聖地とされていることからもスペインの歴史はアストゥリアス州抜きでは語れません。
そんなアストゥリアス州ですが、夏は涼しく冬は少し暖かい住み心地の良い西岸海洋性気候のため、自然も豊富で緑のスペインとも言われています。ピコス・デ・エウローパ国立公園、永年牧草地、湖、北部は海岸、南部は高山といった雄大な自然に囲まれた魅力的な地域なのです。
情熱的で豊かな自然に恵まれたアストゥリアス州で生を授かったラモン・フェルナンデス・クエルボが、一体どのようにしてクエルボ・イ・ソブリノスを生み出したのか。
その歴史を振り返ってみたいと思います。
スペインの情熱からキューバのスピリットへ
スペインの礎を築いたアストゥリアス州出身のクエルボ・イ・ソブリノスの創業者ラモン・フェルナンデス・クエルボですが、1862年に遠く離れた異国の地キューバの首都ハバナに移住しました。
19世紀の後半、ハバナはカリブ海の真珠と言われるほど栄えた黄金時代を迎えており、世界から注目を集めたこの地にラモン・フェルナンデス・クエルボも憧れを抱きます。そして新たな世界で活躍するという情熱を胸にLa・Casa(ラ・カーサ)というジュエリーブティックを開きました。
時は経ち1882年、ラモン・フェルナンデス・クエルボの経営を甥たちが手伝うことになります。この時、クエルボとその甥たちという意味を持つ「クエルボ・イ・ソブリノス」に店名を変更し、世界へ羽ばたく一歩を踏み出しました。
19世紀末には飛躍的な成長を遂げ、ハバナに訪れた著名人であれば一度は訪れるべきブティックとまで言われ、元英国首相のウィンストン・チャーチル、物理学者アルベルト・アインシュタイン、作家ヘミングウェイなど偉人にも愛されることになります。
事業の成長に伴いヨーロッパにも進出し、ウォッチブランドとして成功を収めたクエルボ・イ・ソブリノス。1950年代後半に起きたキューバ革命など政治情勢に翻弄され約40年休業に追い込まれながらも、1997年に再起を果たしました。
そんなクエルボ・イ・ソブリノスの特徴は何と言っても「スイスのハートにキューバのスピリット」と表現されるように、カリビアンカルチャーを取り入れた個性的でエレガントなデザインと精巧な技術です。
唯一無二のラグジュアリーウォッチブランドが生み出してきたコレクションの数々は、アストゥリアスの情熱があったからこそ成し得たことなのかもしれません。
クエルボ家発祥地を称えた「ヒストリアドール アストゥリアス」
クエルボ・イ・ソブリノスは2022年新作コレクション「ヒストリアドール アストゥリアス」を発表。
19世紀に富を求めキューバへと航海した勇敢な移民でもある創業者の故郷アストゥリアス州を称えたコレクションであり、原型は1940年代に製造されたクエルボ・イ・ソブリノスを象徴するアールデコ様式美を大胆に取り入れています。
まず目を惹くのは、外周に向かうほど濃い色調に変化するスモーキーなダイヤルカラーです。ブルー、グリーン、レッド、タバコと4色のカラーバリエーションをご用意。
いずれの色も神秘的なアストゥリアスとキューバを連想させるデザインです。
ダイヤルにセットされる長短針はフランス語で菱形を意味するローザンジュスタイルを採用。シャープな形状がエレガントな印象を与えます。また12時位置にはアプライドのブランドエンブレムが悠々とした存在感を放ち、6時位置に配置された黒ディスクと白文字のデイト表示がダイヤル全体を調和している。
ボディーとなるケース径40mmのSS製ラウンドケースは、丁寧に研磨し曲線の美しさを伝えています。そこへティアドロップ(涙滴形)に猫足をミックスしたユニーク且つ、アストゥリアスの歴史建造物を彷彿させるようなラグと組み合わせ優雅な雰囲気を演出。
ラグの形状は緩やかなカーブを描き、コードバンのストラップと組み合わせることで手首をやさしく包み込む快適な装着感を提供し、デザインだけではない実用性を兼ね備えた細やかな心配りにもぬかりがありません。
搭載されているムーブメントには、ブゾー224をベースとしたスイス製自動巻きCYS5104を採用。巻上げローターにはブランドエンブレムを施し、表面はコート・ド・ジュネーブで装飾しています。シースルーバックケースを通して高性能ムーブメントを鑑賞できるなど、全方位から魅力を堪能できます。
最後に
クエルボ・イ・ソブリノスの創業者ラモン・フェルナンデス・クエルボの故郷でもあるアストゥリアス州の歴史、ラグジュアリーウォッチブランドとして世界中で愛されるまで飛躍してきた背景についてご紹介して来ました。
ハバナへ移住して成功するという情熱と冷静な事業への取り組みがなければ存在しえなかったクエルボ・イ・ソブリノス。そんなクエルボ家の発祥の地を称えた「ヒストリアドール アストゥリアス」は創業者の人生を詰め込んだ珠玉のコレクションです。
人の心を動かすものは人の情熱であることを教えてくれた彼らの想いは途絶えることなく未来へと紡がれていくことでしょう。