クエルボ・イ・ソブリノスと著名ブランドとのダブルネーム
スイスの老舗時計メーカーを語るうえで、欠かすことのできないのは“ダブルネーム”です。
今から100年前にさかのぼると、時計ビジネスでの小売店の力は現在よりもはるかに強いものでした。ヨーロッパの時計メーカーは、正規販売店や代理店という独自の流通ネットワークを持っていなかったため、現地での小売店は現地市場へのアクセスを得るために必要不可欠な存在となっていました。
エンドユーザーは、時計メーカーについての知識を持っておらず、小売店が現地市場の顧客(エンドユーザー)から大きな信頼を得ており、時計メーカーにとって重要な役割を果たしていたのです。事実、19世紀後半の段階では、時計メーカーは文字盤に何の「ブランド名」も付けずに時計を納品し、小売業者がその店名を入れていたこともありました。初期のロレックスも同様でした。
ヨーロッパを代表する腕時計メーカーとして名高いロレックスも、創業して間もない当時は知名度向上を目的にさまざまなブランドと腕時計を共同制作・販売し、数々の魅力的なダブルネームを生み出してきました。
過去に制作されたロレックスなどのアンティークウォッチのダブルネームは、有名宝飾品店との深いつながりを示す希少なアイテムであり、時代を越えて愛される逸品として、国内外のアンティークウォッチコレクターを虜にしています。
クエルボ・イ・ソブリノスでもロレックスとのダブルネームを制作しており、希少価値の高いものとしてコレクターから注目を集めています。
クエルボ・イ・ソブリノスのダブルネーム
「スイスのハートにキューバのスピリット」そんなフレーズで表現されるブランド【クエルボ・イ・ソブリノス】。
クエルボ・イ・ソブリノスではロレックスや他の時計メーカーと提携してダブルネームを生み出した実績があります。
クエルボ・イ・ソブリノスは、元英国首相チャーチル、ノーベル物理学者のアインシュタイン、作家のヘミングウェイといった著名な人物も足を運んでいた高級腕時計専門店。
時計大国スイスの緻密な設計技術と、キューバのカリビアンカルチャーが融合した個性的な外観と優れたムーブメントは、腕時計コレクターであれば誰でも手に入れたくなる魅力を秘めております。
1940年代にはロレックスをはじめ、「パテック・フィリップ」「ロンジン」「ユリスナルダン」など多数ブランドと提携して多数のグローバルブランド・ダブルネームを製造。
1959年に発生したキューバ革命の動乱をきっかけに、2000年の再興まで休眠状態に陥っていましたが、現在では世界各地で高品質なラグジュアリーウォッチを販売しています。
ヨーロッパブランドではお目にかかれないような、ラテン独特の優雅さを内包したクエルボ・イ・ソブリノスの腕時計は、アンティークウォッチ収集が目的の方であっても魅了されるはずです。
ロレックスが手掛けたダブルネーム
腕時計への造詣が深い場合を除くと、そもそもダブルネームという存在自体にピンと来ない方が多いかもしれません。
腕時計業界で使用されるダブルネームとは、ひとつのモデルに2社のブランド名が記載された製品を指す言葉であり、言葉の通り「2つの名前」が含まれた腕時計を意味します。
ダブルネームの腕時計はブランド名が文字盤あるいはケースの側面に記しており、腕時計の制作・販売を2社共同で行ったことを証明する“印”となるのです。
ブランド名だけでなく、製品によっては製造元に“ゆかり”がある国の国章、あるいはブランドのロゴが使われています。
誰もが知る高級腕時計専門店のロレックスでは数多くのダブルネームが存在し、「カルティエ」「ティファニー」などのブランドともコラボレーションしていました。
ロレックスには宝飾品大手以外でも潜水作業専門店「COMEX」や「フェラーリ」「ドミノピザ」「コカ・コーラ」などといったユニークなダブルネームもあるのです。
ベーシックやスポーツモデルなどのダブルネームは、アンティーク・ロレックスの品々でもとりわけ希少価値が高い製品であるため、腕時計を含むヴィンテージ品のコレクターであれば垂涎の的だといえるでしょう。
ダブルネームの制作・販売で頭角を現したロレックス
ロレックスは今でこそ高級ウォッチの代表格として認知されている存在ですが、ロンドンで創業後、スイスに本社拠点を置いた1920年代以前は現在ほどのブランド力が無い状態でした。
しかし、1930年代に突入してからは徐々にロレックスの名が広がり始め、遂にはスイスの高級腕時計店である「ブヘラ」「バイヤー」「ギュブラン/ギュベリン」でもロレックスの製品が取り扱われるようになります。
こうしてロレックス・ダブルネームは20世紀半ばあたりから数を増やし、1950年代では宝飾品ブランド「ティファニー」の顧客サービスの一環で、ロレックスを購入する際に文字盤へティファニーのサインが入れられるようになりました。
ティファニーと双璧をなす「カルティエ」でもロレックスのダブルネームが販売されておりましたが、こちらは一般販売ではなく上顧客向けにブランド名をプリントする形を取っていたため、現存するロレックス・ダブルネームの中でも特に希少価値が高いものとなっています。
このように、ダブルネームは腕時計メーカーと時計業界の内外に位置する、さまざまなブランドが提携して実現した製品です。
そのため、ロレックス往年のコレクターだけではなく、提携ブランドのファンがダブルネームをお求めになることも珍しくありません。
専門店(ブティック)からオリジナル時計を製造するブランドへ
クエルボ・イ・ソブリノスがブティックから、さらに一歩踏み込んで自らオリジナルデザインの時計製造に進出したことは特筆に値します。
中南米からヨーロッパに進出して、製造工場をつくった時計メーカーは他にはありません。
クエルボ・イ・ソブリノスがフランス、ドイツ、スイスでの時計製造や販売の手を広げていたころ、かつて時計製造で重要な地位にあったイギリスでは、時計ビジネスでの顕著な活動が見られないような状況下でした。
まとめ
今回は、クエルボ・イ・ソブリノスのダブルネームについてご紹介しました。
ロレックスにかかわらず、戦前・戦後で生み出されたダブルネームは現存数が決して多いとは言えず、モデルによっては既に倒産した企業のダブルネームも含まれるため、希少価値が高いものが数多くあります。
今後もダブルネームの持つ魅力と価値に注目してみてはいかがでしょうか。